表面処理

表面処理は、生産工程で導入されたコンタミネーションと微小不純物を医療機器の表面から取り除き、粗削りの端をならし、角を丸くし、表面を滑らかにすることによって、医療機器の表面の質、耐食性、生体適合性を高めます。STI では製品の仕様と使用する素材、および関連する ASTM 規格に応じて最適化した化学的機械的および電気化学的表面処理を行っています。

レーザー切断直後で洗浄前の100μmステント・ストラットの表面部分を写した1000倍拡大のSEM顕微鏡写真。Nd:YAGレーザーがニチノールを溶解した様子が分ります。

SEM で1000倍に拡大した
NiTi 製100μm ストラット

表面安定化処理と電解研磨処理は、体内に埋め込まれ、体液中の腐食性成分にさらされる医療用インプラントの耐食性を高めます。 表面処理はとがった角や粗削りの端、酸化層、バリ、スラグ、リキャストなどのレーザー加工中にもたらされるミクロンサイズの欠陥を取り除きます。

右のSEM 顕微鏡写真をご覧ください。1000倍に拡大した NiTi 製ステントは、100ミクロン・ストラット上のレーザーパルスの熱や打撃の影響を示しています。この写真に見られるような不均一な表面、端のかえりやスラグなどの望ましくないものを表面処理が取り除きます。

化学的処理
  1. 酸洗 - レーザー切断中に生じた酸化層、汚れ、溶解金属の影響や、さびなどのコンタミネーションを、対象物を酸洗溶液 (酸浴槽) に浸して除去する処理。STI では主にステンレスやコバルトクロム合金から酸化層を除去する目的で酸洗を使っています。
  2. 表面安定化処理 - マイルドな酸化剤を使って金属表面のコンタミネーションや硫化物を分解し遊離鉄を除去して、ステンレス、チタン、ニチノールの表面の耐食性を改善する処理。表面安定化処理は、表面に新たな厚い保護皮膜を速やかに形成します。
  3. 中和 - 表面安定化処理媒体の化学反応を停止する処理。
  4. 加工後洗浄 - 対象物を水やアルコールで洗浄し、加工残留物を除去する処理。
機械研磨
  1. 超音波洗浄 - 対象物をマイルドな洗浄液 (水やその他の溶媒) に浸し、高周波の音波で洗浄液を攪拌して、表面に付着したごみなどのコンタミネーション (油脂、指紋、埃など) を取り除く処理。超音波洗浄は、ステントガイドワイヤー、カニューレ、内視鏡管などの小さな管状物の洗浄しにくい部分の洗浄を可能とします。超音波洗浄の変数は、対象物、洗浄液、温度、容積、洗浄時間などです。
  2. ステント生産において、ホーニング処理は顕微鏡下でのレーザー切断の後に、微細やすりを使って行われます。

    ホーニング - ステント生産

  3. ホーニング - レーザー切断の直後に行われる砥粒加工工程。たとえばステント生産では、キメの細かいやすりを使ってストラット間の残留素材を穏やかに取り除き、粗削りの端を滑らかにします。
  4. 磁気バリ取り - 生産工程で生じた鋭い角や端の、公差の厳しいバリ取りや丸み付けを行うのに使われる磁気ピン回転機。小さなステンレスピンと石鹸水から成るバリ取り媒体で満たした容器に部品を入れます。ピンが回転して部品にあたることで、バリ取り効果が生じます。
  5. マイクロブラスト - ブラスト媒体と呼ばれるミクロンサイズの微細砥粒を清浄な空気に混ぜて、一定圧でノズルから噴射する処理。マイクロブラストは集中的なバリ取り、表面のテクスチャー付け、表面洗浄、鋭い角の丸みづけに使うことができます。
電解研磨または電気化学的研磨 (EP)

電解研磨は複雑な形状の物体の表面から電解溶解によって金属を取り除く、制御された再現性のある電気化学的工程です。医療機器、ステント心臓弁フレーム手術器具はいずれも電解研磨によって、外科用途に要求される表面仕上げを実現できます。

EP はバリ取りと研磨を同時に行い、擦り傷、小さな亀裂、内部応力、熱影響域、不安定な酸化物などの機械または熱による変形を起こさずに下地金属構造を発現させます。 EP は滑らかで顕微鏡下でも均一な明るい鏡面をつくります。

次の高倍率の走査型電子顕微鏡写真は、コバルトクロム製およびステンレス製機器の電解研磨の前後です。

レーザー切断

レーザー切断後のコバルトクロム製棒部。ドロスと不安定な酸化物が見られます。

酸洗 / スタンピング

酸洗でドロスと酸化物を除去し、スタンピングで傷跡や異物をプレス加工します。

電解研磨

電解研磨は素材を取り除き、表面を研磨し、角を丸めます。

電解研磨後 (2000倍)

下地金属の真の結晶構造が明らかにされます。

電解研磨前 (100倍)

電解研磨前のステンレス製スプリングに見られる冷間加工の影響

電解研磨後 (100倍)

電解研磨後のステンレス製スプリングの均一で滑らかな表面

電解研磨前 (1500倍)

電解研磨前のコンタミネーションが付着した不均一な表面

電解研磨後 (1500倍)

電解研磨後の顕微鏡下でも凹凸の見られない滑らかな鏡面


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電解研磨を施したコバルトクロム棒部のSEM顕微鏡写真。EPにより下地金属の結晶構造が明らかとなり、顕微鏡下でも凹凸のない光沢のある研磨面と丸みのある角ができます。

滑らかな表面はコンタミネーションの蓄積を減らし、より優れた表面安定化を可能とし、摩擦を減らします。このような電解研磨の利点は、異物反応やインプラント上での細菌発育の可能性を減らし、耐食性を高めることにより、医療用インプラントの生体適合性を高めます。

たとえば NiTi 製インプラントでは電解研磨により表面のニッケル (Ni) が選択的に減り、表面を安定化する酸化チタンの薄膜が生じます。ニッケルは発癌性で、炎症反応を誘発することから人体に有害です。このため、電解研磨の利点はバリ取りや端や角の丸みづけや滑らかな表面にとどまりません。耐食性と生体適合性を高める点が、バイオメディカル用途では極めて重要です。

工程変数

電解研磨の変数として、対象物の幾何学形状、原材料の基本的特性、(冷間加工、レーザー切断および熱処理段階後の) 最初の表面仕上げ、電解液の組成と飽和状態、温度、陽極と陰極の表面積比、電流密度、研磨時間、攪拌方法などがあります。