ステント

ステントは、生体適合性のある金属、生分解性の金属、またはポリマーでできた微小なメッシュチューブで、血管 (心臓血管、神経血管、末梢血管) や生体導管 (消化管、尿路、胆道) の中に留置されます。ステントは、導管や血管の内壁を押し上げる骨格の役目を果たし、閉塞部を開くことによって体液の自然な流れを可能とし、血管の崩壊、狭窄、および閉塞を予防します。

ステントは、次のように用途によってその製造用のデザイン、寸法、最適素材が大きく異なります。下表は一般的なステント用途と、利用可能な寸法をまとめたものです。

ステント 一般的な素材 外径 (mm) 長さ (mm) 肉厚 (mm)
冠状動脈 ステンレス、CoCr 2.0-4.5 6-32 0.08-0.11
神経血管 ニチノール 2.0-5.0 6-50 0.10-0.15
頚動脈 ニチノール 6.0-10.0 15-60 0.10-0.20
末梢 ステンレス、ニチノール 9.0-14.0 20-80 0.15-0.20
胆管 ニチノール 6.0-14.0 20-150 0.20-0.30

心臓血管(冠状動脈)部ステント

冠状動脈ステント

冠状動脈ステント

冠状動脈ステントは、心筋に酸素を供給する冠状動脈の狭窄を治療する最小侵襲 PCI 術で埋め込まれます。ステンレスとコバルトクロム合金には、バルーン拡張型ステントをこれらの小さな血管の高圧状態に耐えられるようにする塑性特性があります。バルーン拡張型ステントは、バルーン拡張中に塑性変形が起こり、それによって形状が固定します。

動脈壁に穿孔や重大な損傷が起こった場合は、損傷部分を「封じ」、動脈の血液の流れを確保する緊急措置として、心膜組織でコーティングした特殊ステントを用いることができます。

神経血管ステント

脳血管疾患の最も一般的なタイプは、頭蓋内血管の閉塞や狭窄を原因とする虚血性発作 (87%) と動脈瘤の破裂をしばしば原因とする出血性発作 (10%) です。

ステント併用塞栓術用ニチノール製ステントのプロトタイプ

ステント塞栓術

小型自己拡張型ステントは、閉塞した脳血管を拡張するために使うことができます。またステント支援コイル塞栓術では、カテーテルを通して細いワイヤー (塞栓用コイル) を脳の対象部分に送り、血管の弱くなった部分にコイルを詰めることによって、頭蓋内動脈瘤を治療します。

バルーン拡張型ステントは、拡張に高圧が必要であるため、脳の細い血管に損傷を与える可能性があります。自己拡張型ステントは高圧による拡張が不要のため、ニチノールは神経血管ステントの優先素材となっています。

頚動脈ステント

自己拡張型のニチノール製ステントは、血液を脳に送る頚動脈の狭窄部に留置して、血流を確保し、手技後の動脈崩壊や閉塞を予防します。頚動脈ステントは柔軟でなければなりません。これは、バルーン拡張型ステント (ステンレスまたはコバルトクロム製) への外からの圧力でステントが恒久的に損傷し、動脈閉塞につながるというリスクが認識されているためです。

ステンレス 316LVM 製末梢ステント

末梢ステント

末梢ステント

末梢ステントは、手足や内臓の末梢血管に留置されます。ベアメタルのものや、薬剤や膜のコーティングを施したものを含め、自己拡張型のニチノール製ステントがしばしばこの目的に用いられます。

胆管ステント

胆管ステントは胆管の閉塞の治療に使われます。胆管ステントの複雑な送達と配置には、環状、湾曲、および角ばった構造を通過するよう操作できる高い柔軟性が求められます。

金マーカー付きのニチノール製ステント

胆管ステントの設計には、柔軟性、移行抵抗、および径方向圧力の要件が考慮されます。STI は金属製ステント (一般にニチノール製) を製造し、必要に応じてX線不透過マーカーを溶接しています。膜カバーは、ステント内部の腫瘍形成を予防し、この比較的長い (≤ 120 mm) ステント内の胆汁の流れを確保する目的で、後日取り付けられます。

ステント生産工程

ステントの製造は、さまざまな分野の専門知識が要求されるアートと言えます。 求められる製品の最高品質を確保するには、最適素材の選択から、複雑な幾何形状の高精度レーザー切断、そして表面処理熱処理の両方が含まれる完璧な仕上げに至るまでの段階を経る必要があります。

原材料

様々な素材と寸法の金属チューブ

第一のステップは、用途に最適な素材の選択です。次に、生産ロット内およびロット間の公差が小さい一貫性のある生産が行えるよう、納入された原材料の品質を検査し確認します。金属製ステントは一般に、ステンレス (316LVM)、ニッケルチタン (ニチノール)、チタンまたはコバルトクロム (CoCr) 合金 (L605、MP35N) などの移植可能グレードの金属から造られます。

レーザー加工

ステント製作法には、レーザーによるチューブ切断をはじめ、ワイヤー・ブレーディング、ニッティング、レーザーによるシート切断が含まれます。今日では、ほとんどのステントは様々な寸法、長さ、壁厚の金属製チューブをレーザー切断して製造されています。

熱処理

ステンレスやコバルトクロム合金製のバルーン拡張型ステントには、内部応力を取り除き、金属を軟化し、伸張率を高め、ストラット破損リスクを軽減し、疲労抵抗を向上する目的で焼きなましが施されます。自己拡張型ステントはニチノールの柔軟特性を活用するもので、フレームの最終形状と変態温度を設定する形状固定と呼ばれる異なる工程を必要とします。

表面処理

レーザー加工後の工程には、ホーニング、マイクロブラスト、酸洗、電解研磨、表面安定化処理、超音波洗浄などが含まれます。これらの工程によって、欠陥のない明るい光沢面と優れた耐食性を有する高品質の生体適合性製品が生まれます。

X線可視性の向上

画像技術とステント設計の進歩により、送達システムの小型化とステントプロファイルの薄化が実現しています。透視検査におけるステントの可視性は、ステントのサイズが小さくなるほど低下するため、X線不透過マーカーをステントの設計に組み込む必要があります。マーカーは、金、タンタル、プラチナ・イリジウムのような貴金属からできています。性質の異なる素材のレーザー溶接では、ガルバニック腐食の問題が浮上するため、これに対処する必要があります。

品質保証

心臓血管ステントキット

心臓血管ステントキット

生産工程の全段階で、高解像度の光学顕微鏡やビデオ検査システムを利用して外観検査と寸法検査を実施し、最終製品がお客様の仕様を確実に満たすようにしています。STI のステント製造・組立工程は、ISO 13485:2003 及び ISO 9001:2008 の品質規格に準拠しています。

ステントキット組立

心臓血管ステントキットと異種生体組織カバードステントのクリーンルーム組立(生体組織処理、最終製品組立、および包装を含む)。